原子爆弾による被爆の話(3)


発言1050(00739/寺尾 武治 /自由人 )91/08/05 13:23

その3

鷹野橋をとおって、やっと学校に着きました。木造の校舎や寮は全部焼け落ちており、正門右側の図書館と奥の理科実験室の外郭だけが残っていました。正門の横には焼けただれた馬の死骸が放置され悪臭を放っていました。つぎに何もないことを覚悟の上、すぐ近くの知人橋本さん宅の焼け跡に行きました。ここはご主人が戦地に行き、女性ばかりの家庭だったので、防空壕を掘ったり、大切な物を地下に格納してあげていたので、気になっていました。ただ一つの救いは、地下の物を掘った痕があり、生きていることがはっきりしたことです。数年前所用で広島に行きましたが、見当もつかない街の変わりようで、橋本さん一家が何処でどうしているか知るすべもありませんでした。それから電車通りを白神社の方に歩き、市役所前の広場で罹災証明書をもらいました。町を歩く人は、ほとんど包帯姿の怪我人で、自分の包帯姿なんて全く気になりませんでした。焼けて鉄骨だけになった電車が道の真中に、でんと座っています。電線や電話線がぶらさがっています。紙屋町の交差点を左にまがり、産業奨励館(原爆ド−ム)、T字形の相生橋、土橋、福島町を電車線路に沿って歩き、己斐に向かいました。見渡すかぎりの焼け野が原で、点々とコンクリ−トの外壁だけが残っています。焼けたトタンが風に吹かれキィキィガタンガタンとなる音、人の気配が感じられない、しかも死臭のたちこめた街、あっちこっちとござをかけた死体をよけながら己斐駅に着き、宮島電車で旅館に帰りました。数時間歩き廻った8日の行動、全くつまらぬことをしたものだと悔いた次第です。

もうごめんです。生きた地獄なんて見たくありません。思い出すのもいや です。書き込むのもこれで精一杯です。

最後に一言、物資の豊富な好きなことの言える平和な世の中になりました。「生きているのが不思議です」生かされているのでしょう。感謝の気持だけです。不平も不満もありません。社会からうけた恩恵に感謝し、いつか社会にお返しがしたいものです。

739 寺尾

yakeato1.gif 米軍撮影
市の中心部、八丁堀から西方の爆心を見る。手前は商工中金ビル。電車は爆風で軌道からはずれたまま、
人々が軌道沿いに歩く姿も見える。右上方に原爆ドームが見える。



@レスポンス 桂木健次 91/08/05 21:16

寺尾さん、あなたの「語り部」を学生に読ませたい。
 ぼくの大学のネットに転載をお許し出来ませんか?

Ken


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@レスポンス 後藤 明子 91/08/05 22:06

なぜかしら、涙が溢れてきました。

明日は平和授業があります。映画鑑賞のようです。
目を背けず、しっかりと見よう。

お話、どうもありがとうございました。



@レスポンス 松村 亮司 91/08/05 22:08

ryoji.jpg 寺尾先生、原爆の体験談、本当にありがとうございます。

本当に体験された方のお話は、どんな書物を読むより私たちの心を抉ります。
先生の語っていただいた体験談、若い人達に、私たちの子どもたちの世代に、 もっと、もっと読んでもらいたい気持ちです。
そして、先生の「もう書くのがこれで精いっぱいです。思い出すのもいやです。」と言うお気持ち、ずしりときます。
先生の勇気あるご意志を、多くのネットワーカーに伝えたい。私も桂木先生と同じように思っています。

パソコン通信をしていて良かった・・・・・。今、なぜかそういう気持ちでいっぱいです。



@レスポンス 清水 保雄 91/08/05 22:53

貴重な体験談、ありがとうございました。

最近は殆ど話をしないのですが、両親から超低空飛行の艦載機の銃弾の雨の中を 必死で逃げた経験とか戦中の食糧事情とか色々の体験談をよく聞かされました。

これら貴重な体験を決して「風化」させてしまう事のない様にしなければなりません。

戦争を(身を持って)体験した事のない世代のひとりですが現実の出来事としてとらえようと思います。



@レスポンス 会津 泉 91/08/06 02:06

aizu.jpeg今日が、広島の原爆記念日ですね。

 午前零時を過ぎたので、もう今日が8月6日ですね。
寺尾先生の一人称での語りには、とても圧倒されます。
高校生位のとき、ずいぶん原爆の記録をいろいろ本で読みましたが、 実際に被爆された方から直接に話をお聞きしたことはほとんどありませんでした。

 貴重な文章を読ませていただきありがとうございます。本当に語りたくない、でも語っておかなければ、というお気持ちがにじむメッセージだと思いました。
 これを読んで、どう受け止めるべきか、が私たちの問題だと思います。
会津 泉


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@レスポンス  浅井 秀二 91/08/06 03:06

 寺尾先生の、貴重なお話し・・・
 結局、目をそらし読めませんでした。読もう、読まなければという気持ちと、読みたくないという気持ち・・・
 心は、ぐちゃぐちゃです。
  結局、読めない私でした・・・

                      ダメですね・・・・・・